「特殊造形」という言葉は、実は さほどメジャーな言葉ではありません。
【 造形 】という言葉だけ聞くと、「立体的な物を作る」のだろうな と想像はつくと思うのですが、そこに【 特殊 】というワードが付くと??
何が特殊なの??
と疑問がわきますよね。
「特殊造形」というのは、ありとあらゆる素材 をつかって 立体物を作る技術 のことを指します。
素材に限定されず【 造形物 】を製作するということです。
そして、求められる仕様 や 材料の特性 などから、「エンターテイメント業界」での製作物の依頼が大半を占めています。
以前掲載をしたコラムにて、お客様のオーダーの諸条件をもとに、制作方法を決めていくというお話をしましたが、今回は「素材」に特化して、少しご紹介しましょう!
多種多様な「材料」
特殊造形では、多くの種類の【 合成樹脂 】や、それを元に製造された【 合成樹脂素材 】 が使われることが多いです。
(※以下、「樹脂」=「合成樹脂」)
実は、そんな樹脂には 多種多様な種類があり…。
■ ウレタン樹脂
■ ポリウレタン樹脂
■ ポリエステル樹脂
■ エポキシ樹脂
■ PET樹脂
■ ABS樹脂
■ シリコン樹脂 などなど
聞いたことのある名称はありますか?
こんなに沢山の種類があって、材料を使う上で差があるの? と思う方もいらっしゃることでしょう。
でも、それぞれに【 特性 】がやはりあります。
素材の特性【 FRP編 】
例えば…
こちらの造形物は、大きな魚の形をしたゴミ箱。
オーダーには…
【 大きい 】
【 中は空洞 】
【 中にゴミが沢山入れられる耐久性 】
【 中身が見えるように透明に 】
【 屋外でも展示 】
というキーワードがありました。
このキーワードから、[ ポリエステル樹脂を使ったFRP ]で製作することになりました。
FRPというのは、Fiber Reinforced Plastics(繊維強化プラスチック)の略。
要約すると、ポリエステル樹脂に補強材(強化繊維)を入れ込んで、製作をするということです。
「 軽くて強い 」「 薄く丈夫に製作可能 」「 耐水性がある 」「 透明なポリエステル樹脂がある 」という特性から、オーダーのキーワードが全てクリアできるのです。
ちなみに…
こちらのマスクも、FRP製です。
人が被れるサイズ感なので、他の素材でも 重量はさほど気にせず製作は出来ますが、FRP製にした大きな理由は デザインにあります。
FRPは、「 切削 」や「 研磨 」などの加工がしやすい素材です。
このマスクの[ ツルッとした曲面 ] や [ 均一な塗装 ] を施すには、表面を綺麗に研磨できる素材 でなければなりませんでした。
「 加工のしやすさ 」と、人がかぶるため可能な限り「 軽量 」に、という条件を考えるとFRPが最適だったのです。
素材の特性【 柔らか樹脂編 】
こちらのマスクでは、お客様のオーダーはシンプルでいて明確でした。
「とにかくリアルなオンドリ」を作りたい、ということです。
鶏の特徴といえば、【 鶏冠(トサカ)】と【 肉ひげ 】。
トコトコ歩くとプルプル震えるような、柔らかさが見ているだけでも感じられますよね。
やはりそこは拘って再現すべきでは!と思い、鶏冠と肉ひげは「シリコン樹脂」で製作することになりました。
シリコンの大きな特徴は、とにかく[柔らかさ]。
まるで人肌のような感触の材質です。
ただ、シリコンにも欠点はあります。
それは、【 重さ 】。
シリコンは、他の様々な材料と比べても 比重が大きい 素材なのです。
人間が被るマスクなので、少しでも軽く製作できた方が、装着する側としては楽ですよね。そのため、「 シリコンである必要がない箇所 」は、軽量 且つ 形状が維持できる硬さで、ある程度の柔軟性がある「 ウレタン樹脂 」で作ることにしたのです。
どんな素材で作りたいか?より、どんな物を作りたいか
今回は、製作したい物の デザイン や 使い方 によって最適な材料がある、というテーマでした。
稀に「◯◯を使いたいです!」と材料のリクエストを頂くお客様もいらっしゃいますが、よくよくお話を伺い、そのリクエストの背景を知ると もっと最適な素材があるケースもあります。
はたまた、最適な素材があったとしても、納期やご予算から それを選択できないケースも。
そんな時は、お客様のご依頼の中の優先順位を伺いながら検討を重ねて、最終的に最適な製作方法と素材が決定されていくのです。
製作のご相談の際は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
※お問合せの際は、お問合せページ記載の確認項目をご一読いただきますよう、お願い申し上げます。